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旅客艇においては、航走時ではなく出港直前の停泊状態、入港直後の下船待ちの状態で酔いを発症することが多いとの指摘を数多く受けた。
2)列車実験について
JR総合研究所を中心として、列車の乗り心地、快適性に関する研究は古くから実施されてきていると聞く。長い研究の成果の現れが制御型の振り子電車であると考えられる。今回の実験においても、受動型制御の特急列車ではかなり高レベルの振動、横揺れを計測することができた。しかし、ごく最近開発された、プログラム型(正確な表現かどうかは分からないが)能動制御の効いた新型電車特急では、振動は少なくなっているものの、横揺れに関しては振動レベルほど小さくならないことが計測によって明らかとなった。路線の違い、その他周辺条件の違いを考慮に入れた解析、更には、搭乗被験者の心理的、生理的反応の時間的推移をも考慮に入れた解析を行うことが要求されるであろうが、列車では、低周波数の横揺れを犠牲にして高周波の振動レベルを下げることが研究されたことを窺わせる。今後は、船と同様の低周波数領域の乗り物酔い、乗り心地を研究する必要があるのではないかと考える。
この観点からは、本研究の適用範囲は船に限らないという本来の目的に合致するので、協力して研究を進めることのきっかけを作ったことになると考えている。
3)遊具を用いた実験について
大型遊具の場合は、通常の乗り物と同様の考え方で、酔いの発症、乗り心地を論ずることはできないであろう。急発進、急停車等、通常の乗り物では起こり得ない加速度の異常値を連続的に搭乗者に経験させて、搭乗者の不安、期待、こわいもの見たさ等の異常とも言える心理状態を満たすことを目的とした乗り物である。従って、通常の解析手法で処理できる部分は少ないと考えられる。しかし、解析の過程で提案された「ムードチェック」の手法は乗り物酔いの発症過程における心理的変化を把握する手段として有効であると考えている。
実機を用いた実験結果の総括として、本研究の実船実験、列車実験、遊具実験を通して得た事柄を述べた、実船実験を初め種々の乗り物における実機実験、更には遊具による特殊な環境下における実験など多様な実機計測を実施できたことの意義は極めて大きい。また、実船実験における被験者の生理的反応の計測の難しさ等今後のこの種の研究にとって重要な教訓を得たと考えている。さらに、医学分野からは、本研究で行われた実船実験にさらに医学的見地からの計測項目を追加した実験実施の要請を受けたことも大きな意味を持つと考える。

 

 

 

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